植物ホルモン情報を読み込んでいます...
盆栽の各技法が植物ホルモンにどのような影響を与えるかを科学的根拠とともに解説します
Pinching
頂芽を摘むことでオーキシン源を除去し側芽の発生を促す
頂芽(オーキシンの主要合成部位)を除去することで、極性輸送による基部へのオーキシン供給が途絶える。これにより側芽に対する頂芽優勢が解除される。
オーキシンによる側芽抑制が解除されると、根から導管を通じて供給されるサイトカイニンが側芽に到達しやすくなり、側芽の細胞分裂と伸長が促進される。
Pruning
不要な枝を切除し樹形を整える
複数の枝先(オーキシン合成部位)を除去することで、樹全体のオーキシン供給が広範に減少する。残った芽に対する抑制が弱まる。
オーキシン/サイトカイニン比がサイトカイニン優位に傾き、残存する芽の発生・伸長が促進される。
剪定後の新梢再生時にジベレリン合成が活性化し、節間伸長が促進される。特に強剪定後の徒長枝で顕著。
Wiring
針金で枝に機械的ストレスを与え方向を矯正する
枝を曲げる機械的ストレスがACC合成酵素を活性化し、エチレン生成が増加する。接触形態形成(thigmomorphogenesis)により枝が太く短くなる。
枝を曲げると重力と機械的変形によりオーキシンが曲げの外側(下側)に偏在し、局所的な細胞伸長パターンが変化する。
Repotting
根を整理し新しい用土に植え替える
根の剪定により活発なサイトカイニン合成部位(根端分裂組織)が大幅に除去される。新根が再生するまでサイトカイニン供給が一時的に低下する。
根端の除去によりオーキシンの分解・消費部位が減少し、地上部から根へ向かうオーキシンが切断面付近に蓄積。新根の発根を促進する。
Defoliation
全葉を切除し小さな新葉の発生を促す
全葉除去により光合成器官を失った樹が新葉再生を急ぐ。新葉展開時にジベレリン合成が活性化し、節間伸長と葉面積の急速な確保が起こる。
新芽(葉原基)の展開に伴い、新たなオーキシン合成部位が形成される。若い葉はオーキシンの主要合成部位である。
Air Layering
幹の樹皮を環状に剥いで不定根を誘導する
環状剥皮により師管を通じた物質輸送が遮断され、頂部から極性輸送されるオーキシンが剥皮部上部に蓄積する。高濃度オーキシンが不定根始原体の形成を誘導する。
剥皮部上部に蓄積した高濃度オーキシンがACC合成酵素の発現を誘導し、エチレン生成が増加する。エチレンは不定根形成をさらに促進する。
Cuttings
切り枝を用土に挿して発根させ新個体を得る
切り枝の頂部から基部へ極性輸送されるオーキシンが切断面に蓄積し、不定根の始原体形成を誘導する。発根促進剤(IBA)は外部からオーキシン濃度を高める。
Watering Management
水分ストレスを調整して生育を制御する
乾燥ストレスにより根でNCED(9-cis-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ)が活性化され、ABAが急速に合成される。導管を通じて葉に輸送され気孔閉鎖を誘導する。
過湿・冠水状態では根が低酸素に曝され、ACC(エチレン前駆体)が根で合成されて導管で地上部に輸送される。地上部でACCオキシダーゼによりエチレンに変換される。
Light Management
日照条件を調整して成長方向や花芽形成を制御する
非対称な光照射により、フォトトロピン受容体が光を感知しPINタンパク質によるオーキシン極性輸送の方向が変化する。陰側にオーキシンが偏在し、陰側の細胞伸長が促進される(Cholodny-Went説)。
十分な光照射下ではフィトクロム経路によりジベレリン合成遺伝子の発現が抑制される。日陰では逆にGA合成が促進され徒長する(避陰反応)。
適切な日長条件(短日植物では短日、長日植物では長日)により葉のCONSTANS-FT経路が活性化され、FTタンパク質(フロリゲン)が合成される。