盆栽の元気がなくなり、水やりをしても回復しない──そんなとき根を確認すると、根が腐っていることがあります。根の病害には「根腐病」「白紋羽病」「紫紋羽病」など複数の原因があり、それぞれ対策が異なります。本コラムでは、根の病気を正しく鑑別するための観察ポイントと対策を解説します。
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■ 3つの根の病害の概要
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【根腐病(ねぐされびょう)】
原因菌:Phytophthora 属、Pythium 属(卵菌類)
主な対象樹種:ほぼ全ての樹種。過湿条件で発生
【白紋羽病(しろもんぱびょう)】
原因菌:Rosellinia necatrix(子嚢菌類)
主な対象樹種:ウメ、サクラ、カキ、リンゴ、ブドウ等の果樹・花木。広葉樹全般
【紫紋羽病(むらさきもんぱびょう)】
原因菌:Helicobasidium mompa(担子菌類)
主な対象樹種:ウメ、サクラ、クワ、カキ等。白紋羽病と共通する樹種が多い
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■ 地上部の症状(最初に気づくポイント)
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3つの病害はいずれも「根の機能低下」が本質であるため、地上部の初期症状は似ています。
共通する地上部症状:
・樹勢の低下(新芽の伸びが悪い、葉が小さい)
・葉の黄化・萎凋
・水やり後も萎れが回復しない(根腐れとの共通点)
・秋でもないのに紅葉・落葉する
違いが出るポイント:
・根腐病:急性の場合は数日〜1週間で急速に萎れて枯死する。多くは梅雨〜夏の過湿時
・白紋羽病:数ヶ月かけて徐々に衰弱。1年以上かかることもある
・紫紋羽病:白紋羽病と同様に徐々に進行するが、やや進行が遅い傾向
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■ 根の観察による鑑別(決定的な違い)
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鉢から抜いて根を観察することが、正確な診断の鍵です。
【根腐病の根の特徴】
・根が水浸し状に黒〜暗褐色に変色している
・根の外皮を引っ張ると、芯(中心柱)が簡単に抜ける(スルッと抜ける感触)
・悪臭(腐敗臭)がすることが多い
・菌糸は肉眼では見えにくいが、根の表面が水っぽくぬめる
・土壌が過湿で、水はけが悪い状態が確認される
【白紋羽病の根の特徴】
・根の表面に白い菌糸の膜(菌糸マット)が密着している
・根の皮を剥くと、皮と木質部の間に白い扇状の菌糸束が広がっている
・進行すると根の皮が容易に剥がれ、木質部が白く腐朽する
・根の断面を見ると、辺材部が白く変色している
・独特の強いキノコ臭がする
・鉢土中に白い紐状の菌糸束(根状菌糸束)が見えることがある
【紫紋羽病の根の特徴】
・根の表面に紫褐色〜赤紫色の菌糸の膜が付着している
・この紫色が紫紋羽病の最大の特徴であり、他の根の病害との決定的な鑑別ポイント
・進行した根は紫褐色の菌糸で覆われ、皮が剥がれやすくなる
・鉢土に紫褐色の菌糸束が伸びていることがある
・白紋羽病と異なり、菌糸の色が明確に紫〜赤紫
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■ 発生条件の違い
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【根腐病】
・過湿が最大の誘因。水はけの悪い用土、受け皿の水、長雨で発生
・気温20〜30℃の高温期に多発
・Phytophthora属は遊走子(水中を泳ぐ胞子)で感染するため、水を介して急速に広がる
【白紋羽病】
・腐植質に富む有機物の多い用土で発生しやすい
・地温15〜28℃(22℃前後が最適)の温暖期に活発
・感染した鉢土・用具を介して伝染する
・一度発生すると数年間は土壌中に菌が残存する
【紫紋羽病】
・白紋羽病と同様に有機物の多い用土で発生
・地温18〜26℃で活動する
・酸性土壌(pH4.5〜5.5)で発生しやすい傾向がある
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■ 防除と対策の違い
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【根腐病の対策】
・最優先は「水はけの改善」。赤玉土・軽石を増やし、受け皿の水を捨てる
・発症した鉢は鉢から抜き、黒く腐った根を全て切除する
・切除後は切り口を乾燥させてから植え替える
・有効薬剤:ダコニール1000(TPN)の灌注
・予防:過水を避ける。梅雨期は雨が直接当たらない場所に移動する
【白紋羽病の対策】
・感染した根を徹底的に除去する。白い菌糸の付いた部分を全て切除
・使用した用土は再利用せず廃棄する(土壌消毒が必要)
・使用したハサミ・刃物は消毒する(菌糸が付着している可能性がある)
・有効薬剤:トップジンM水和剤(チオファネートメチル)の灌注
・予防:未分解の有機物(生の落ち葉・木屑)を用土に混ぜない
【紫紋羽病の対策】
・白紋羽病と同様に感染根の除去と土壌の入れ替えが基本
・土壌のpH矯正(石灰施用でpH6.0以上に)が予防に有効
・予防:酸性に傾きすぎない用土管理。通気性の確保
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■ 鑑別のまとめ
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・根が水浸し状に黒変 + 悪臭 + 過湿環境 → 根腐病
・根に白い菌糸マット + キノコ臭 + 白い菌糸束 → 白紋羽病
・根に紫〜赤紫色の菌糸 → 紫紋羽病
根の病害は発見が遅れがちですが、「水やりしても萎れが回復しない」ときは必ず根を確認してください。早期発見と適切な対応が樹の生存率を大きく左右します。
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