「散布しても効かなくなった」──これが農薬の耐性・抵抗性問題です。同じ作用機序(FRAC/IRACコード)の薬剤を繰り返すと、数年で防除効果が失われます。本コラムでは「実際にどう組み合わせるか」の実践プログラムを紹介します。各有効成分のFRAC/IRACコードはこのサイトの有効成分詳細ページで確認できます。
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■ 耐性・抵抗性はなぜ生まれるのか
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農薬を繰り返し使うと、その薬剤が効かない「変異個体」が自然選択で生き残り、繁殖します。数世代後には変異個体が集団の主流となり、防除効果が著しく低下します。
耐性がつきやすい条件:
・同じ薬剤を同一シーズンに3回以上使用する
・同じ作用機序(同FRACコード)の薬剤を繰り返し使用する
・推奨希釈倍率より濃くして使用する(中途半端な濃度が耐性個体を選択する)
・ハダニのように世代交代が速い生物(約10〜14日/世代)
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■ ローテーションの大原則
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原則1:同FRACコード(殺菌剤)または同IRACコード(殺虫剤)の薬剤を連続して使わない
原則2:同じシーズン(春〜秋)で同じ薬剤の使用は2回まで
原則3:保護殺菌剤(FRACコードMコード系:ダコニール・ジマンダイセン等)を必ずローテーションに組み込む。Mコード剤は多作用点阻害型のため、耐性がつきにくい「リセット剤」として機能します
原則4:殺ダニ剤は作用機序を変えながら使う。ハダニの世代交代は速く(5〜10日)、耐性獲得も最速クラスです
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■ 殺菌剤ローテーションの実践例
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【年間ローテーションプログラム(春〜秋)】
春の予防散布(3月〜4月)
・1回目:ダコニール1000(FRACコード M05)+展着剤
・2回目(10日後):トリフミン乳剤(FRACコード 3)+展着剤
梅雨前後(5月〜7月)
・3回目:ジマンダイセン水和剤(FRACコード M03)+展着剤
・4回目(10日後):トップジンM水和剤(FRACコード 1)※治療が必要な場合
夏〜秋(8月〜10月)
・5回目:ダコニール1000(FRACコード M05)に戻る
・6回目:アミスター(FRACコード 11)または別の系統の殺菌剤
【組み合わせの解説】
・ダコニールとジマンダイセンはどちらもMコード(多作用点)。これらを「保護剤の柱」として挟み込む
・トリフミン(コード3)・トップジンM(コード1)は浸透移行性の「治療剤」。耐性リスクがあるため連続使用を避ける
・コード11(ストロビルリン系)は予防効果が高いが耐性菌が出やすいため年2回以内に
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■ 殺虫剤ローテーションの実践例
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【吸汁性害虫(アブラムシ・カイガラムシ・コナジラミ)向け】
・1回目:モスピラン液剤(IRACコード 4A ネオニコチノイド系)
・2回目(3週間後):スミチオン乳剤(IRACコード 1B 有機リン系)
・3回目(3週間後):アドマイヤーWP(IRACコード 4A)← 同系統だが別成分、やむを得ない場合
→ 理想は3回ごとに系統を変える。4Aコードが多いネオニコチノイド系は特に注意
【ハダニ向け(最も耐性問題が深刻)】
・1回目:ミルベノック乳剤(IRACコード 6 マクロライド系)
・2回目(2週間後):ロディー乳剤(IRACコード 3A ピレスロイド系)
・3回目(2週間後):マイトコーネフロアブル(IRACコード 20D ビフェナゼート)
→ ビフェナゼート(コード20D)はミルベメクチン(コード6)やピレスロイド(コード3A)とは異なる作用機構のため、交差耐性がない。理想は3系統をフルローテーション
【チョウ目幼虫(ケムシ・イモムシ)向け】
・1回目:ゼンターリ顆粒水和剤(IRACコード 11A BT菌)
・2回目:アファーム乳剤(IRACコード 6 エマメクチン)
・3回目(必要な場合):スミチオン乳剤(IRACコード 1B 有機リン系)
→ BT菌は天然由来で耐性がつきにくいため積極的に活用
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■ 耐性が出てしまったときのサインと対応
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【耐性のサイン】
・適正濃度で散布したのに効果が明らかに低い
・散布翌日には虫が復活する
・白い粉状のうどんこ病が散布後も広がり続ける
【対応策】
1. 同系統(同FRACコード)の薬剤を即座に使用停止する
2. 異なる作用機序の薬剤に完全切り替えする(有効成分ページでコードを確認)
3. 今シーズンは「物理的防除」(手除去・水流・マシン油)を併用して薬剤使用量を減らす
4. 翌シーズンから正しいローテーションを開始する
※ いったん耐性がついても、その薬剤の使用を数年間停止することで耐性個体の割合が低下し、再び効果が回復することがあります。
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