農薬は適切に管理すれば安全に使用できます。しかし取り扱いを誤ると人体・環境・他の生物に深刻な影響を与えます。本コラムは農薬を安全に使うための総合マニュアルです。
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■ 散布前の準備:必要なPPE(個人防護具)
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農薬散布では以下のPPEを着用してください。農薬によって求められる防護レベルが異なるため、必ず各農薬のラベルを確認してください。
【マスク】
・農薬用防毒マスク(有機溶媒用活性炭入りカートリッジ付き)が理想
・最低限:市販の農業用マスク(N95相当)。紙製マスクは農薬蒸気を通すため不適
・乳剤・粉剤は蒸気・粉塵の吸入リスクが高いため防毒マスクを推奨
【手袋】
・ニトリルゴム手袋(厚手)が最も推奨。有機溶媒の浸透が少ない
・天然ゴム手袋も可だが、有機溶媒系の乳剤には弱い
・薄いポリエチレン手袋は農薬が浸透するため不適
【眼の保護】
・化学実験用ゴーグル(飛沫防止型)を使用
・通常のサングラスは隙間から飛沫が侵入するため不適
【皮膚保護】
・長袖・長ズボンを着用(化学繊維より綿素材が望ましい)
・農薬が付着しても体に浸みにくいよう、袖口・首周りを閉じる
・作業後は石鹸で手・顔・首を十分洗浄する
【足元】
・長靴(農薬が染みにくいゴム製)を着用
・サンダルや布製スニーカーは農薬が浸透するため使用禁止
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■ 希釈・調製時の安全
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・必ずPPE装着後に調製を始める
・希釈は原則として屋外または十分換気された場所で行う
・農薬原液を直接触れない。万が一皮膚に付着したら直ちに水で洗い流す
・計量には農薬専用のメスシリンダーや注射器型計量器を使用。食器・料理用容器の転用は絶対に禁止
・調製した薬液をペットボトル等の食品容器に移し替えない(誤飲事故の原因)
・農薬容器のラベルは剥がさない。内容物が分からなくなると廃棄も困難になる
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■ 散布中の安全
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・風向きを確認し、常に風上から風下へ散布する(自分が薬液を浴びない向きで)
・ペット(犬・猫)・幼小児が散布エリアにいないことを確認する
・散布後は最低4時間(できれば24時間)散布エリアに立ち入らないよう周囲に伝える
・散布中に気分が悪くなったら直ちに散布を中止し、新鮮な空気を吸う。症状が続く場合は医療機関へ
・石灰硫黄合剤など強アルカリの薬剤は皮膚・粘膜を強く刺激する。目に入った場合は水で15分以上洗浄し眼科へ
【近隣・環境への配慮】
・隣地への飛散を防ぐため、散布する向きや風速に注意
・水路・池・川への薬液の流入は法的に禁止されている(農薬取締法)
・ハウス内での農薬使用後は十分換気してから入室する
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■ 農薬の正しい保管方法
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【場所の条件】
・直射日光が当たらない冷暗所(10〜25℃が目安)
・子供・ペットが絶対に手の届かない施錠できる場所
・食料品・飼料・生活用品と完全に分けて保管(同じ棚・引き出しに入れない)
・万が一の漏れに備え、トレイやポリ袋の上に置く
【保管上の注意】
・農薬は必ず元の容器のまま保管する。別の容器に移し替えない
・ラベルが剥がれた場合はすぐに貼り直すか新たに内容物を明記する
・農薬同士を混在させない(同じ棚でも乳剤・水和剤・粒剤はそれぞれ分ける)
・凍結・高温にさらさない(乳化不良・分解の原因)
・開封後の粉剤・水和剤は密封して湿気の吸収を防ぐ
【有効期限の確認】
・農薬には製造年月日と使用期限が記載されていることがある
・期限切れの農薬は効果が低下するだけでなく、化学変化で有害な副産物が生じる場合がある
・3〜5年以上前に購入した農薬は廃棄を検討する
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■ 残液・容器の適切な廃棄方法
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【残液の処理】
・散布後の余った薬液:その日中に希釈して農地・庭土に散布する(捨てずに使い切る)。それ以外の廃棄は禁止
・大量の残液:農薬販売店や市区町村の産業廃棄物処理業者に相談する
・水道・排水溝・川への廃棄は農薬取締法・水質汚濁防止法で禁止されている
【容器の廃棄】
・ガラス瓶・プラスチック容器:必ず空にしてから(3回以上すすいで)市区町村のルールに従い廃棄
・農薬の容器は「産業廃棄物」扱いになることがある。地域のJAや農薬販売店が回収している場合が多い
・「農薬空容器回収」制度を利用すると無料で適切に処理してもらえる(JA・市区町村に問い合わせ)
【不要農薬の処分】
・使わなくなった農薬は購入した農薬店や地域のJAに相談する
・家庭ごみとして出すことは禁止されている
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■ 万が一の事故時の対応
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【皮膚に付着した場合】
→ すぐに着衣を脱ぎ、付着部位を水で15分以上洗浄する
【目に入った場合】
→ 直ちに流水で15分以上洗眼し、眼科を受診する
【吸入した場合】
→ 新鮮な空気のある場所に移動する。気分が悪ければ横になって安静にし、医療機関に連絡
【誤飲した場合】
→ 吐かせない(食道・気管をさらに傷める)。すぐに医療機関または救急に連絡し、農薬の容器を持参する
→ 中毒110番(公益財団法人日本中毒情報センター):072-727-2499(大阪)/ 029-852-9999(つくば)
※ 受付時間・料金等の最新情報は日本中毒情報センター公式サイト(https://www.j-poison-ic.jp/)で確認してください
【農薬名が分からない場合】
→ 容器・ラベルを医療機関・救急に提示する。成分名・登録番号が記載されている
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