農薬の製剤タイプ(乳剤・水和剤・フロアブルなど)の特徴は各剤型ページで確認できます。本コラムでは「どんな状況でどの剤型を選ぶべきか」という実践的な選択基準を解説します。
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■ 状況別 剤型選択ガイド
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【速効性が最優先の場合(害虫を今すぐ止めたい)】
→ 乳剤(EC)が最速。有機溶媒に溶かされた有効成分が植物・虫の体表に素早く浸透。
→ スミチオン乳剤・ロディー乳剤・アファーム乳剤などが該当。
→ 注意:高温期(30℃以上)の使用は薬害リスクが高い。早朝散布を徹底。
【高温期(夏)に使う場合】
→ 乳剤を避け、水和剤(WP)・顆粒水和剤(WG)・水溶剤(SP)を優先。
→ 乳剤に含まれる有機溶媒が高温で揮発加速し、薬害の原因になる。
→ フロアブル(FL)も比較的安全だが、散布後すぐ乾燥するよう早朝に行う。
→ フロアブルは懸濁液(けんだくえき)であり乳剤とは異なる製剤タイプ。高温で分散性が低下する場合があるため、使用前によく振って均一にする。
【粉立ちが嫌・計量を手軽にしたい】
→ フロアブル(FL)が最もトラブルが少ない。液体なので計量が楽で粉が舞わない。
→ 顆粒水和剤(WG)は従来の水和剤より粉立ちが少なく、溶けやすい。
→ エアゾル・スプレー(AL)は希釈不要で最も手軽だが、広い面積には不向き。
【長期間(2〜4週間)効果を持続させたい】
→ 粒剤(GR)を株元施用。浸透移行性成分(ダントツ・スターガード・オルトラン粒剤等)が土壌から根に吸収され、長期間植物体内で効果を発揮。
→ マイクロカプセル剤(SE)は有効成分の徐放により残効が長い。
→ カチオン系展着剤(アビオンE等)を加えた葉面散布も残効性が向上。
【土壌害虫(コガネムシ幼虫・センチュウ等)の防除】
→ 粒剤(GR)一択。株元にばら撒いて水でなじませる。
→ 液体の葉面散布剤は土壌への効果が限定的。
【雨が多い時期(梅雨)・耐雨性が必要な場合】
→ 水和剤(WP)+カチオン系展着剤の組み合わせが最も耐雨性が高い。
→ フロアブル(FL)も展着剤と組み合わせると耐雨性が向上。
→ 乳剤は有機溶媒を含むため高温時の薬害リスクが高く、梅雨時期は薬害と降雨の両リスクが重なるため使いにくい。
→ なお、乳剤の油分は付着性を高める場合もあるため、耐雨性自体は製品によって異なる。
【ベランダ・少量の鉢(3〜5鉢程度)への使用】
→ エアゾル・スプレー(AL)が最も手軽。希釈・計量不要で初心者に最適。
→ 小型噴霧器で使うなら、計量が楽なフロアブル(FL)か水溶剤(SP)。
【葉の内部に侵入した病原菌・害虫への対処(治療的防除)】
→ 浸透移行性の薬剤を優先。剤型としては乳剤・水溶剤が浸透しやすい。
→ エステル型展着剤(アプローチBI等)を加えると浸透率が大幅に向上。
→ 水和剤(WP)は予防に強いが、すでに侵入した菌への治療効果は浸透移行型剤型に劣る。
【混用(タンクミックス)する場合】
→ 水→展着剤→水和剤→フロアブル→乳剤の順(テニス法)で加える:水和剤 → フロアブル → 乳剤 → 展着剤の順。
→ 乳剤同士の混用は薬害リスクが上がるため2剤以上の混用は避ける。
→ 水溶剤と水和剤の混用は比較的安定している。
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■ 盆栽特有の使用場面と剤型選択
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【松柏類(五葉松・黒松・真柏)のハダニ防除】
→ 乳剤(早朝限定)またはフロアブルが適切。針葉の隙間まで浸透させるためシリコーン系展着剤を添加すると効果大。葉裏への散布が必須。
【小さい鉢(3号〜5号)の殺虫・殺菌】
→ エアゾル・スプレーが使いやすい。ただし噴射口を葉から30cm以上離すこと。近すぎると高濃度散布になり薬害のリスクがある。
【展示会・観賞直前の防除】
→ 粒剤(GR)の株元施用が臭いや薬液の液垂れがなくておすすめ。散布から3〜5日後には薬液が土壌に吸収されて葉面に残らない。
【複数の樹種を同時に防除したい(病害虫の種類が混在)】
→ 広域殺虫剤(スミチオン水和剤)+広域殺菌剤(ダコニール1000)の水和剤同士の混用が調製・管理しやすい。フロアブル同士の混用も比較的安定。
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■ 剤型変更で問題が解決することも
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「同じ成分でも剤型を変えることで薬害が消えた」「乳剤より水和剤の方が残効が出た」というケースは珍しくありません。同じ有効成分でも剤型によって植物への浸透速度・残効・薬害リスクが異なります。特定の農薬で薬害が出た場合、同成分の別剤型を試してみることを検討してください。
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