盆栽の病害虫防除で最も大切なのは「タイミング」です。害虫が爆発的に増える前、病原菌が侵入する前に手を打つことが「少ない農薬で高い効果」につながります。本カレンダーは関東基準(温暖地)です。寒冷地は1〜2週間遅く、暖地(九州・四国)は1〜2週間早く読み替えてください。
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■ 1月(厳冬期)
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樹は完全休眠中。病原菌・害虫も冬眠・越冬状態のため、強力な薬剤が使える絶好の防除タイミングです。
【主な作業】
・マシン油乳剤(45〜95倍液)の散布
→ カイガラムシの越冬個体を窒息防除。松柏類・カエデ・モミジなど全樹種に有効
→ 薬液が葉の隅々まで行き渡るよう、ゆっくりたっぷり散布する
・石灰硫黄合剤の散布(落葉樹:7〜10倍、常緑樹:20〜40倍)
→ うどんこ病・黒星病・さび病の越冬菌糸と越冬卵を一掃
→ 葉がついたまま使うと薬害が大きいため、落葉後の休眠中が原則
→ 気温が5℃以上の日を選ぶ
【注意】石灰硫黄合剤とマシン油乳剤の近接使用は薬害のため、間隔を1ヶ月以上空ける
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■ 2月(冬末・芽ぶき準備期)
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厳冬防除の続きと、春の発生に備えた準備の時期です。
【主な作業】
・1月に石灰硫黄合剤を使えなかった樹への追加散布(芽が動き始める前までに完了)
・カイガラムシの目視確認:白い綿状の塊(コナカイガラムシ)、茶色い楯状の突起(カキカイガラムシ)がないか確認。発見したら歯ブラシで機械的に除去
【注意】2月末〜3月初旬は早咲きの梅などで芽が動き始めます。石灰硫黄合剤の芽への散布は厳禁なため、展葉前に散布を完了させてください。
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■ 3月(芽出し期)
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植物が活動を再開するとともに、病原菌・害虫も復活します。特にアブラムシの発生が急激に始まります。
【主なターゲット】
・アブラムシ:新芽・展開葉の裏に群生。黄緑・黒・灰色など種によって色が異なる
→ モスピラン液剤(500倍)またはスターガード粒剤を株元施用
→ 初期発生を見つけたら手でつぶすか、水流で洗い流す(薬剤なしでも有効)
・うどんこ病:白い粉状のカビが葉・新芽に発生。バラ・ツツジ・カエデに多い
→ トリフミン乳剤(3,000倍)またはカリグリーン(炭酸水素カリウム系)で予防散布開始
【タイミングのコツ】
「新芽が1cm伸びたら殺虫剤初回散布」を目安にする。アブラムシは新芽の柔らかい組織が大好物で、この時期の防除が最も費用対効果が高い。
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■ 4月(春の成長期)
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気温上昇とともに病害虫が急速に増殖します。
【主なターゲット】
・黒星病(バラ・ウメ・カリン):葉に黒い斑点が広がり、放置すると落葉。梅雨前が最重要防除時期
→ ダコニール1000(1,000倍)またはジマンダイセン水和剤(600倍)を予防散布(7〜10日間隔)
・ハマキムシ(葉をくるくる巻く幼虫):シャク・ウメ・カエデ・ツゲなど多くの樹種に発生
→ アファーム乳剤(2,000倍)。巻いた葉を開いて幼虫を直接駆除するのが最も確実
・テントウムシダマシ(ニジュウヤホシテントウ):盆栽よりも鉢周辺の雑草から侵入
→ 侵入経路となる雑草を除去することで予防効果が高い
【注意】4月は花期の樹種が多い。サクラ・ウメ・モモは花が終わってから殺虫剤を散布する(送粉者・益虫へのダメージを防ぐ)。
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■ 5月(初夏・旺盛成長期)
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病害虫の発生がピークに向かう時期。特に葉が柔らかい新芽が病原菌に狙われやすくなります。
【主なターゲット】
・ハダニ:五葉松・黒松・真柏など松柏類に多発。葉がかすり状(灰色)になる
→ 初発見時はミルベノック乳剤(1,000倍)。5月は抵抗性がつきにくいため速効性重視で
・炭疽病:葉に茶色の斑点。カエデ・モミジ・ツバキなどに多発
→ ダコニール1000(1,000倍)で予防。感染後はトップジンM(1,500倍)で治療
・カイガラムシ(幼虫=ハシリコ期):5〜6月は幼虫(クローラー)が移動・分散する時期。薬剤が最も効きやすい
→ スミチオン乳剤(1,000倍)またはアドマイヤーWPで防除
【松柏類の特別管理】
五葉松・黒松・赤松の新芽(キャンドル)が伸びる5月は、ハダニとゾウムシに特に注意。新芽の根元にダントツ水溶剤(4,000倍)を散布すると予防効果が高い。
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■ 6月(梅雨入り期)
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雨が多い梅雨時期は、カビ性の病害が爆発的に発生しやすくなります。散布のタイミングが命です。
【主なターゲット】
・灰色かび病(ボトリチス病):花弁・葉・新芽が灰色のカビで腐敗
→ 開花後の花ガラを早期除去。晴れ間にトップジンM(1,500倍)またはロブラール(1,000倍)
・うどんこ病の第2波:湿度が上がると再び活発化
→ 晴れた日の早朝にトリフミン乳剤(3,000倍)またはモレスタン水和剤
・アブラムシの爆発的増殖:気温20〜25℃が好適で、梅雨の晴れ間に急増する
→ ダントツ水溶剤(4,000倍)浸漬または葉面散布。1回の散布で2〜3週間効果持続
【梅雨時の散布テクニック】
晴れ間の予報が出た日の前日夕方または当日早朝に散布。散布後4時間以内に雨が来る予報なら延期する。展着剤(ニーズ等カチオン系やアビオンE等パラフィン型)を加えると耐雨性が向上する。
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■ 7〜8月(盛夏)
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高温・乾燥でハダニが爆発的に増殖する最も危険な時期。薬害リスクも最高潮です。
【主なターゲット】
・ハダニ:最も増殖が速い時期(約10〜14日で世代交代)。葉に白い斑点・かすり状の傷
→ 初期発見が命。発生初期ならミルベノック(1,000倍)、中〜高密度にはロディー乳剤(1,000倍)
→ 葉裏への十分な散布が必要。表面だけでは半分以下の効果
→ 同系統の殺ダニ剤の連用は抵抗性をつける。IRACコードが異なる薬剤を交互に使う
・カミキリムシの産卵:根元に木屑・フラスが出ていたら幹に穿孔されている証拠
→ 確認したらキリで穿入孔を見つけ、スプレー式殺虫剤を噴霧して塞ぐ
→ 幹にスミチオン乳剤(1,000倍)を散布して成虫の飛来を抑える予防法も有効(穿入孔発見時はスプレー式殺虫剤を噴霧)
【盛夏の散布原則】
・散布は必ず早朝(7時前まで)または日没後(薬害リスクが下がる)に行う
・乳剤は使用しない(水和剤・フロアブル・水溶剤を使う)
・濃度は指定の倍率の上限(薄め)で使用する
・気温35℃以上の日は全ての散布を翌日早朝に延期する
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■ 9〜10月(秋)
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気温が落ち着き、植物が紅葉・結実に向かうとともに、秋特有の病害が現れます。
【主なターゲット】
・さび病:葉表面にオレンジ・茶色の粉状斑点。カキ・ウメ・ツバキ・ヒノキに多い
→ ダコニール1000(1,000倍)またはジマンダイセン水和剤(600倍)で予防散布
・褐斑病:葉に茶褐色の円形病斑。モミジ・カエデ・ケヤキなど落葉樹に多い
→ トップジンM水和剤(1,500倍)で治療的散布
・ケムシ類の秋期発生(マイマイガ・チャドクガ等)
→ ゼンターリ顆粒水和剤(BT菌、1,000倍)が幼虫期に有効。毒毛があるため触れないよう注意
・カイガラムシ(2回目の幼虫期):9月下旬〜10月
→ スミチオン乳剤(1,000倍)で防除。春の個体より薬剤が効きにくい場合がある
【秋の重要ポイント】
秋の病葉・落葉を放置すると翌年の病原菌の発生源になります。落葉後は速やかに集めて焼却または袋に入れて廃棄してください。
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■ 11〜12月(落葉後・越冬準備期)
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落葉後は薬剤の選択肢が広がります。翌年の爆発的発生を防ぐ越冬防除が最も重要な時期です。
【主な作業】
・落葉・枯葉の完全除去:鉢土の上や枝の付け根に残る落葉には病原菌・害虫の卵が潜む
→ 細かい枯葉まで歯ブラシや爪楊枝で丁寧に取り除く
・石灰硫黄合剤の散布準備(12月下旬〜1月が最適):
→ 落葉した後のタイミングを見計らって散布準備
・カイガラムシの目視確認:枝の表皮に張り付いた成虫(白・茶色・黒色の楯状)を確認
→ 発見次第、歯ブラシや竹串で機械的に除去
・幹・根元の点検:カミキリムシの食害痕(木屑・フラスの排出)がないか確認。見つけたら穿入孔を特定して殺虫剤を注入
【年間防除まとめ】
盆栽防除の「三大重要タイミング」は①1〜2月の越冬防除、②4〜5月の芽出し後の初回防除、③6月梅雨前の殺菌剤予防散布です。この3回を確実に実施するだけで、年間の病害虫被害を大幅に減らせます。
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