農薬は病害虫を防除する一方で、テントウムシ・クサカゲロウ・カブリダニなどの「益虫(天敵)」にも影響を与えることがあります。益虫を守りながら害虫を防除するIPM(総合的有害生物管理)の考え方と実践方法を解説します。各益虫の詳細はこのサイトの益虫ページをご参照ください。
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■ なぜ益虫を守ることが重要か
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益虫(天敵)が活躍できる環境では、害虫の密度が自然に低く抑えられます。逆に農薬で益虫を全滅させると、害虫が天敵なしに増殖し、より大量の農薬が必要になるという悪循環に陥ります。
例えば:
・テントウムシの成虫1頭は1日に50〜100頭程度のアブラムシを捕食
・カブリダニはハダニを優先的に捕食し、農薬より早く密度を下げることがある
・クサカゲロウの幼虫はアブラムシ・コナジラミ・カイガラムシ幼虫を多数捕食
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■ 農薬の選択性(益虫への影響度)
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農薬は害虫・益虫を選ばず効果があるものと、特定の生物グループのみに選択的に効くものがあります。
【益虫への影響が大きい農薬(使用時期・方法に注意)】
・有機リン系(スミチオン・マラソン等)[IRACコード1B]
→ 非常に広い殺虫スペクトル。テントウムシ・カブリダニ・クサカゲロウ等の益虫にも致死的
→ 使用するなら「害虫密度が高い緊急時のみ」「益虫が活動していない時期(冬季等)」に限定
・ネオニコチノイド系(モスピラン・ダントツ等)[IRACコード4A] の花期使用
→ ミツバチ・マルハナバチ等の花粉媒介者に影響。開花中の使用は厳禁
→ 株元施用(粒剤)は葉面散布より花粉媒介者へのリスクが低いが、花蜜・花粉にも成分が移行するため注意
・ピレスロイド系(ロディー等)[IRACコード3A]
→ 天敵昆虫への毒性が高い。水生昆虫(カゲロウ等)にも非常に有毒
・マシン油乳剤
→ カブリダニ・テントウムシの卵・幼虫にも物理的に作用
【益虫への影響が比較的少ない農薬】
・BTW菌(バチルス・チューリンゲンシス)[IRACコード11A]
→ チョウ目幼虫のみに選択的。甲虫類・ハチ類・ダニ類の天敵にはほぼ無害
→ 益虫を守りながらケムシを防除できる最良の選択肢の一つ
・IGR系(ジフルベンズロン・ルフェヌロン等)[IRACコード15]
→ キチン合成阻害のため、キチンを持つ昆虫全般に影響。天敵への影響は中程度
→ 成虫には影響が出にくいが、幼虫期の天敵には作用する
・ミルベノック乳剤(ミルベメクチン)[IRACコード6]
→ ハダニ防除において、一部の研究でカブリダニへの影響が比較的少ないとされる
→ ただし高濃度散布や長時間の接触は天敵にも影響する。カブリダニの種類によっては強い影響を受ける報告もあるため、使用条件に注意が必要
・フロニカミド(IRACコード29)
→ 吸汁害虫に選択的。ハチ類・捕食性天敵への影響が少ない
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■ 益虫が活躍している時期の農薬散布のコツ
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【タイミングの工夫】
・益虫(テントウムシ・クサカゲロウ等)が活発に活動するのは5〜9月の昼間
→ 夕方以降の散布や、天敵がいない冬季の防除を優先する
・アブラムシが爆発する前(初発見時)に手で除去する物理防除を優先し、農薬使用を後回しにする
【場所の選択】
・害虫が集中している枝・葉のみに局所散布する(全体散布を避ける)
・株元の粒剤施用は葉面の天敵を巻き込まない
【農薬の選択】
・ケムシにはBT菌を優先。スミチオン等の広域殺虫剤よりはるかに天敵にやさしい
・ハダニにはミルベノック(比較的天敵にやさしい)を優先し、ロディー乳剤(ピレスロイド系)は最後の手段にする
・アブラムシには粒剤施用(オルトラン粒剤・スターガード粒剤)を優先。葉面散布より天敵への影響が小さい
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■ IPMの5つのステップ
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【ステップ1:モニタリング(週1回の点検)】
全鉢をルーペで点検。害虫・益虫の種類と密度を確認する
【ステップ2:許容レベルの判断】
少量の害虫は益虫のエサでもある。「全滅させる」ではなく「許容できるレベルに抑える」が目標
・アブラムシ:新芽1本に10頭以下なら益虫に任せることを検討
・ハダニ:葉1枚に5頭以下なら経過観察
【ステップ3:物理的防除を優先】
水流による洗い流し、手による除去、粘着テープ等を試みる
【ステップ4:選択的農薬の使用】
物理防除で対応できない場合に、天敵への影響が少ない農薬を選択
【ステップ5:記録】
散布した農薬・使用日・天候・効果をノートに記録する。翌年の防除計画に活かす
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■ 益虫を盆栽エリアに呼び込む環境づくり
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・広域散布を減らし、益虫が住める「農薬フリーゾーン」を部分的に作る
・盆栽棚の周囲にコスモス・マリーゴールド等の花を置くとヒラタアブ・ハナアブが集まり天敵密度が上がる
・水場(小さなトレー)を置くと捕食性昆虫が集まりやすい
・越冬できる枯れ枝・枯れ葉を冬季に全部除去しない(クサカゲロウ等が越冬する場所になる)
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